人口減社会こそ「希望」
日本のオピニオンリーダーの一人が、京都大学こころの未来研究センター教授広井良典さんです。10年前千葉大におられたときから、注目していた方です(もとより面識はないのですが)。
この標題は、広井さんが今年2月の読売新聞の「広論」に投稿されたときの記事のタイトルです。
日本の人口は、明治維新(1868年)のとき約3330万人、日本の人口は、近代化とともに急増し、1945年には約7200万人、高度成長期を経た2008年には約1億2808万人になっています。
広井さんは、人口減少こそ「希望」とし、人口減少は、これまでの成長・拡大路線から大きく発想を転換するチャンスと捉えています。経済成長を目指すこと自体は間違いではないけど、500兆円のGDPを600兆円にするなど量的・ノルマ的思考からは脱却すべきと考えておられます。モノを作れば売れる時代ではなくなった。量的・ノルマ的思考の矛盾や制度疲労も露呈し、品質不正をはじめとした企業不祥事や過労死などが社会問題化しています。人口減少を契機に「拡大成長」から「持続可能性」という目標に軸足を移すべきだと訴えます。すでに世の中的には、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標、SDgsなどが広く知られるところになっています。その意味で世の中の大きな舵は切られつつあるのですが、広井氏は、これからの新しいまちづくりを提案されている。東京一極集中は避けるべきだとされつつ人口や行政機能が拡散する「多種分散」では密度が低下し街が空洞化してしまう。中心部の自動車交通を抑制し、「多種集中」型の集約的なまちづくりを目指すべきとされています。
まったくそのとおりと思っています。世界に先駆けて少子高齢化、人口減少が進むわが国で、世界の範となる「社会」づくりが求められているのです。
ただ「多種集中」というのは簡単なようで難しい。1999年から始まった平成の大合併、自治体を広域化することで財政基盤を強化し、地方分権の推進に対応しようというものですが、ここ数年続いていた災害対応では、対応が不十分な地域が出てくるなど問題も指摘されています。知恵の出しどころです。